マキタ製エンジンの基本構造
マキタは、世界の船舶用低速エンジンの8割を超えるシェアをもつMAN B&W ブランドのライセンスエンジンメーカーとして、主に1~4万トンクラスの外航船向けエンジンを造っています。
その特徴はクロスヘッド型の2ストロークディーゼルエンジンであること。長年培ってきた技術と実績への信頼によって、マキタが造る船舶用エンジンは、スモールボアエンジンでは世界のトップシェアを獲得しています。
低速2ストロークディーゼルエンジンの主流
外洋を航行する外航船では、ディーゼルエンジンが主流です。ディーゼルエンジンとは、シリンダ内の圧縮空気に燃料(重油)を噴射燃焼(爆発)させ、その爆発力でピストンを往復させて動力を取り出す内燃機関。ピストンの往復運動を、前述のクロスヘッドや連接棒でクランク軸の回転運動に変えることでプロペラを回し、船の推進力を生み出すのです。 そして船の推進効率を上げるには、低回転で高出力のエンジンが要求されます。そのため船舶用エンジンはロングストローク化し、その分高まるシリンダ内の側圧を低減するためにピストンと連接棒を“クロスヘッド”と呼ばれる部品で連結したクロスヘッド型を採用するという進化を遂げてきました。
また、マキタが造るエンジンにはすべて過給機を搭載。より多くの酸素を取り込むことで高い燃焼エネルギーを生み出し、それによって小さなエンジンでも大きな出力が得られる構造となっています。
- このクロスヘッドでピストンと連接棒とを連結する構造。
- マキタでは重要部品は自ら手掛ける。写真はクランク軸。
- 過給機の選択と調整はエンジンの性能を決定づける大事な工程。
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船のエンジンの始動方法
エンジンはまずピストンを動かすことで始動します。ところが巨大な船のエンジンでは、ピストンの重さもt(トン)単位。自動車用エンジンなら電動モーターで始動できますが、船のエンジンではとても無理です。ではどうするか? 答えは「圧縮空気を使う」です。シリンダ内に高圧の圧縮空気をタイミング良く送り込み、その圧力によって何トンもあるピストンを動かし、だせい回転から燃料運転に切り替えるのです。ディーゼルエンジンはピストン運動によってシリンダ内の空気を圧縮し高温状態をつくり出し、そこに燃料を噴射して燃焼(爆発) させることで動く仕組みです。だから最初にピストンが動き始める必要がある。その初動は、空気の力に背中を押されて始まるのです。
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船の停止方法
実は、船にはブレーキがありません。ではどうやって止まるのか?大半の船では速度を落とすときには「プロペラを逆回転させる」のです。プロペラはエンジンと直結しています。そのためエンジンも一度停止させて逆回転させる必要があります。これはトランスミッションによってエンジンの回転方向を切り替える自動車のエンジンにはない機能です。