世界初号機が「自分初号機」
入社4年目、試験グループから計画グループに異動して最初に担当した新機種が、S30ME-B。マキタが世界初号機として手がけた電子制御エンジンです。経験の浅い自分でいいのか?そう懸念する私に、上司は「君ならできる」と。これはもう、頑張るしかないですよね。既存機種で計画業務の基本を勉強しながら、“初モノ”に関わる期待感全開で取り組みました。
とはいえ、初号機の難しさは想像以上でした。計画グループの役割は、 造船所と協議しながら仕様を決定し、部品調達や後工程の道筋をつけることですが、初号機の場合はまず「どんなエンジンか?」を伝えるところから始まります。配管の取り合いやメンテナンスの急所など、3Dモデルで何度も説明してやっと理解してもらって製造工程に漕ぎつけても、今度は組み立ての不具合が続出。夜遅く、詳細設計の担当者と2人で大物部品の接合作業を「合ってくれ…」と固唾をのんで見守り、「合わなかったね…」と肩を落としつつ事務所に戻る。と、そんな日々を2年重ねた後、ついにエンジンが起動した時の達成感は凄かったですね。凄すぎて、燃え尽き症候群になりかけましたが、その次もマキタ初号機を担当させてもらい、すっかり初モノの面白さにハマって今に至ります。
任されて悩むから、成長できる
その後、グループ内の役割分担が変わり、現在は主機を離れてSCRシステムの担当に。SCRは環境規制強化に対応したNOx除去装置で、マキタで初めて導入した補機です。これでまた私の初モノ履歴に新たな1機が加わったわけです。思えばS30ME-Bに携わった2年間が一番印象に残っており、特に陸上公試運転後に祝勝会と称して開いた打ち上げの飲み会。設計メンバーに限らず製造及び運転に携わってくれたメンバー約20人が晴れやかに盛り上がる様子を見て、みんなの力を合わせてエンジンを完成させた満足感を存分に味わいました。燃え尽き症候群になりかけても心が折れなかったのは、やっぱりマキタのエンジンが好きだから。そして、一致協力してエンジンと格闘する空気が心地いいから。今後も初号機に関わりたいし、設計以外の部署も経験して幅を広げたいという目標もありますが、それ以上に今は、組織改革に興味があります。
改革と言うと大げさですが、要するに顔を突き合わせて一緒に悩んで一緒に笑う、あの祝勝会のような空気を社内全体で深めたくて。主機担当のリーダーを任されていたころも、若手から相談されるたびに「よし、一緒に現場に行こうか」と。意見交換の場が増えて現場からも好評でした。それとは別に心がけたのが、若手に任せること。いずれも自分で決めて実践していたのですが、考えてみれば今まで関わった上司も例外なく、何か提案すると「いいね、やってみれば」と、任せてくれた。 この先、どんな立場になるにせよ、後輩や新人にどんどん任せ、現場と一緒になって取り組む環境づくりに力を尽くしたいと思っています。